パッピオ(パピプペ親父)の秘密
パピプペ親父とは、TOMITAシンセサイザーサウンドに欠かせない(?)、パ行の音でしか歌わない音色(パッチング)のことである。元祖ボーカロイドといえるかもしれない。実際聞いてみると、見事に中年男性の歌声になっている。初めて聞いた人も絶対忘れないだろう印象的な音だ。
冨田先生がライナーノーツに書いていた話によると、実はこれ、手塚治虫の漫画に出てくるヒョウタンツギのイメージなんだそうですね。
まあそれで、誰が呼んだかパピプペ親父という名前になったらしいけど、個人的はいくらなんでももう少し名前を何とかしてあげたい、と思ってた。
組曲「惑星」の「木星」を聞くと、結構“いい声”でオペラっぽくテノール歌唱しているので、イタリア風に崩してパッピオ、あるいはパッピーオと呼称したい。
ここから本題ですが、実はこのパッピオの再現は、基本的なシンセサイザーでもできたりします。VCOはノコギリ波、VCFはレゾナンスを上げ気味にして、あとはCUTOFFをいじれば、パピプペ……という感じになります。
案外難しいのが、アナログシンセなのでこのCUTOFFの調整で、音符に合わせて手動で適切な位置に変更しないと、きれいにパ行の発音はしません。これ結構職人技がいる部分だったりします。
……ところが、少し前書いた冨田先生と松武秀樹さんが出演されていた番組の話。ここで、この音をmoogで作る箇所があったのですが、箪笥の様子を見ると、手弾きなのになぜかシーケンサーが動いていたんですね。もちろんアナログのステップタイプのやつです。
キーボードを弾くたびにワンステップづつ動くシーケンス。そして音的には非常に美麗に「パピプペポ……」と繰り返しています。ここでピンときたんですが、このシーケンサーでCUTOFFのCV電圧を出していたのです。それで手動でやるより遙かにキレイにパピプペ音が出ていたという訳です。
これまで見たシンセパッチの解説にはそんなことはどこにも書いてなかった。これが美しいパ行の発音の秘密だったんですね。達人の作業は見ているだけで勉強になるわけです。シーケンサーにこんな使い方があるとは目から鱗でした。やはり奥深いアナログシンセ道。