偉大な作曲家たちのビジネス展開

 年表を作った関係でクラシックの作曲家のことを調べていたら、非常に面白いことが判明。

 いまの「音楽業界」みたいなものが世の中で成立したのは、20世紀初頭らしいのです。そして、音楽界がいわゆるクラシックとポピュラー音楽に分かれたのもその辺り。その後クラシックは急速に芸術性を追及するようになり、いわゆる「音学」になって多数のリスナーを失った。むろん、そのリスナーはポピュラーの方へいきます。(ちょうどアメリカで黒人音楽が勃興し、発展していった展開と重なる。ジャズ、R&R、R&B……) もちろんメディアやレコードが爆発的に音楽を広める手段になりました。

 ではそれ以前はどうだったかというと、クラシックがポピュラー音楽的な部分も担っていたわけです。オペラ/オペレッタなんか、もう一般リスナーにも楽しまれていたりした。

 ドビュッシーはちょうどその分かれ目くらいのところにいたといえます。

 ちょっと時代を下ってストラヴィンスキーは、著名な興行師から初期のバレエ音楽3作の発注を受けて大成功させています。このあたりで、いわゆるビジネスとして業界が立ち上がっていたといえそう。

 さて、今度は時代を遡って18世紀のモーツァルト。この時代は音楽の都ウィーンといえど、どうやら業界的なものはなかったらしく、なんと彼はフリーランス音楽家になったあと、自主興行をしているんですね。それで大成功している。サブスク的なビジネスモデルも導入していたらしい。もちろん貴族からの委嘱もありましたが。考えたら17歳まで神童として姉と一緒に欧州中を公演して回っていたのだから、興行のことは知り尽くしているんですよ。非常にしっかりした人だった、借金はあったが。😆

 更に驚くべきは、バロック時代のヘンデルです。ドイツ、イタリア、イギリスと渡り歩いた苦労人……というエピソードが有名ですが、イギリスで成功したのは、作曲家としてだけでないんですね。この人も興行師を兼ねていた、というか音楽興行会社の「社長」でもあった。自分で曲を作り、劇場を借り、オペラ歌手を雇って公演して大成功している。オペラ人気が陰ればオラトリオに鞍替えするなどビジネスセンスも抜群だった。

 ヴィバルディも興行師で、司教も兼ねていた。やっぱり自主公演で大成功している。(晩年失敗して借金を背負ったこともあるらしい)

 バロック~古典時代の作曲家たちは、自分で自分の曲を広める活動をしていた、というかそういうことが出来た人の曲が、今も残ってたりするんですね。もちろん楽曲の芸術性が高いのは最低条件ですが。

 これって、結局今の状況と似てませんか? いわゆる業界が縮小してインディーズが活発になってきているのは、どこか似た時代が到来しているといえそうです。自分でレーベルを作ってどんどん音楽活動していく方法は正解だったと、答え合わせが意外なところでできました。